スピリット オブ クイーンズランド
Spirit of Queensland

スピリットオブクイーンズランドはブリスベン~ケアンズの1,681kmを25時間で結ぶ 振り子式ディーゼル特急です。
区間列車は無く、1週間に5往復が運行されています。

スピリットオブクイーンズランドはクイーンズランド州の州都ブリスベンからノースコースト線を 通り、ケアンズまでの1,681kmを25時間で結びます。
これまでは同区間を客車特急のサンランダーが31時間で結んで いましたが、最高速度160kmの振り子式により所要時間を6時間短縮しました。

ブリスベン~ケアンズの1681kmを日本の路線に当てはめると、 上野ー札幌の寝台特急北斗星1214.7km+札幌ー稚内の特急宗谷396.2kmの1610.9kmと同等程度の距離となります。
ちなみに北斗星と宗谷の所要時間は、上野~札幌の16時間12分+札幌~稚内の5時間10分、計21時間22分となります。



1997年にオーストラリア初の振り子式電車ティルトトレインがブリスベン~ロックハンプトン にて運行を開始しました。 これの発展系として、ロックハンプトン~ケアンズの非電化区間も走行可能なディーゼル機関車のプッシュプルに よる振り子式車両が2003年にEDIレールによって2本製造されました。
この列車は先発の振り子式電車と同じ振り子性能と最高速度160kmの走行性能を有していたため、どちらも 分けることなくティルトトレインと呼ばれていました。
電車タイプとディーゼルタイプの2つのティルトトレインは、名前こそ同じでしたが運用は完全に分けられていました。
また、完全に同じ区間を走る寝台の客車列車のサンランダーも引き続き運行されました。

2003年より
ティルトトレイン(振り子式電車)
運行区間:ブリスベン~ロックハンプトン
客室設備:エコノミー、ビジネス、売店

ティルトトレイン(振り子式ディーゼルプッシュプル)
運行区間:ブリスベン~ロックハンプトン~ケアンズ
客室設備:全席ビジネスシート、ラウンジカー

サンランダー(客車牽引列車)
運行区間:ブリスベン~ロックハンプトン~ケアンズ
客室設備:エコノミー、個室寝台、ラウンジ、食堂車

2010年にディーゼルプッシュプルのティルトトレインを別ブランドに したうえで大幅な改造を施し、客車牽引のサンランダーを廃止にする計画が発表されました。
計画ではこれまでの9両編成に機関車を強化したうえで5両を追加した14両編成とし、追加する5両の内訳は、寝台個室車両3両、 食堂車1両、ラウンジ車両1両です。
また、同形式を1本新造するとしました。 これにより豪華な鉄道旅行のサンランダーの客層を取り込み、老朽化しつつあるサンランダーを廃止、置き換えする というものでした。
しかし、この計画は想定される需要に対して費用が掛かりすぎるということで、改造する範囲を大幅に縮小しました。
車両編成数は従来通りの9両編成とし、全車ビジネス5両(他の4両は定員外)を3両をプレミアムエコノミーに格下げ、2両をレールベッド と呼ばれるフルフラットになる座席になりました。
列車のブランド名はスピリットオブクイーンズランドに決定しました。

2014年より
ティルトトレイン(振り子式電車)
運行区間:ブリスベン~ロックハンプトン(バンダバーグ止めを新設)
客室設備:エコノミー、ビジネス、売店

スピリットオブクイーンズランド(振り子式ディーゼルプッシュプル)
運行区間:ブリスベン~ロックハンプトン~ケアンズ
客室設備:プレミアムエコノミー、レールベッド、ラウンジカー

サンランダー(客車牽引列車)
2014年12月31日にラストラン。廃止。

画像上:登場時のティルトトレイン時代のロゴ
画像下:現在のスピリットオブクイーンズランドのロゴ


先頭の機関車。
160kmを実現する動力部です。
プッシュプルのため、同じ機関車が前後に連結しています。
なお、現在の運用では進行方向を固定した客室設備となっているため、終着駅に着くとデルタ線を使用して 編成が逆転します。
そのため、先頭及び最後尾になる機関車は常に同じです。

運行開始から間もない2004年11月に脱線事故が発生し、157人が負傷しました。その後は 最高速度を100kmに抑え、線路改良と自動列車保護システムの導入により、2007年6月に160km運転が再開されました。


荷物車兼従業員控え車両。

窓は無く、荷物搬出用に大型の両開きプラグインドアがひとつだけあります。


預け入れ荷物の搬入風景。
大型の荷物は駅チェックイン時に回収され、この車両に積み込まれます。

この車両は一般の利用客は乗車しない定員外車両です。

スピリットオブクイーンズランドは定員外車両の割合が高く、機関車、荷物車、 プレミアムエコノミー3両(PE)とレールベットが2両(RB)、クラブラウンジ1両(C)で、
機関車+荷物+RB+RB+C+PE+PE+PE+機関車
9両編成に対して、半分に迫る4両が定員外車両です。


乗降扉。

片開きのプラグインドアです。
押しボタンによる半自動に対応しています。


乗降扉下ステップ

ホームと車両の隙間を減らすステップが出てきます。


プレミアムエコノミー車内。

2+2のリクライニングシートが並んでいます。
電車タイプと同じく、頭上の荷物棚は航空機のようなフタ付きとなっています。
また、電車タイプと違い通路上の案内ディスプレイは各シートに設置したため省略されています。


プレミアムエコノミー座席。

シートは革張りで、リクライニングの角度はやや浅めです。
各シートには案内ディスプレイが設置され、エンターテイメントを楽しむことができます。

この座席で25時間乗車するのは、ちょっと大変な気がします。


最前列の座席のみ存在する棒。

他の座席では、客が前の座席背面のテーブルを使用します。
ところが最前列の席の人は前に座席が無く、妻面にもテーブルが設置されていないため、この棒に 簡易テーブルを差し込むものと思われます。
このような機構は映画館でも見られる他、XPTの寝台車も同様のものがみられます。


前の座席背面にある案内ディスプレイ。

2003年の新造当初から、航空機を意識したエンターテイメントサービスを提供しています。
なお、2014年にスピリットオブクイーンズランドになる前のティルトトレイン時代は、肘掛から 伸びた液晶でした。


足元のコンセント。

オセアニア対応のコンセントが2口設置されています。
乗車時間が長いため、モバイルガジェット全盛期の現代においては重要なサービスです。


デッキ扉。

両開きのデッキ扉の上には、LED式の案内表示機が設置されています。
また、妻面の左右に、最前列の座席利用者それぞれにエンターテイメントサービスの液晶が設置されていますが、 位置が高くて少し見にくそうな気がします。


LED式車内案内表示機

車両がティルトトレインからスピリットオブクイーンズランドに変更された後も、ひっそりとティルトトレインの 表記が残っていました。
Welcome Aboard QRs Tilt Train



座席の移り変わり。

画像上
ティルトトレイン時代
登場当初の全車両ビジネスシート時代のものです。
2+1のリクライニングシートと座席肘掛から伸びたエンターテイメントサービスの液晶が特徴です。
モケットの座席にヘッドレストカバーのスタイルは、電車タイプのティルトトレインのビジネスシート と似ています。 座席の足元にはコンセントがあることも確認できます。
2003年時点でコンセントを各席に設置とは、なかなかの先見の明があります。

画像下
スピリットオブクイーンズランド
ブランド変更に伴って改造された、プレミアムエコノミーです。
液晶が座席背面に収納され、座席周りの空間が広くなりました。
シートはモケットから革張りに変更され、より航空機に近い座席となりました。
座席が革張りになったことで、ヘッドレストカバーが省略されています。


レールベッド車内。

スピリットオブクイーンズランドの上級クラス、レールベッドです。
2+1のフルフラットリクライニングシートが並んでいます。
最前列及び最後列は1+1(座席の幅は同じ)の配置です。

航空機のビジネスクラスのような座席です。
本来はサンランダーの置き換えとして寝台個室車両を新造して連結する計画でしたが、編成両数を 増やさないことになったため、寝台個室と座席の間をとってこのような形になりました。


レールベッド車内(進行方向)

プレミアムエコノミーより大型のエンターテイメントサービスの液晶が備わっています。
座席間隔が広いため、テーブルは座席背面ではなく肘掛から引き出すタイプに変更となりました。


レールベッド座席(二人掛け)

バックシェル構造のため、後ろを全く気にすることなく座席を倒すことができます。
肘掛から引き出すタイプのテーブルが設置されています。
また、コンセントは座席と一体となっており、テーブル下足元付近に移動しました。
ドリンクホルダーがあり、サービスのミネラルウォーターが予めセットされています。


レールベッド座席(一人掛け)

一人旅にうれしい一人掛けの座席です。
個室寝台ではなく座席の一人掛けというのはオーストラリアでは珍しい存在です。
他に一人掛け座席のある車両は、ティルトトレインのビジネスクラス、 ジ・オーバーランドのレッドプレミアムしか ありません。


ブリスベン~ケアンズの25時間の長時間乗車でもレールベッドなら快適に過ごせます。
なお、レールベッドの料金には食事も含まれています。


デッキ仕切りドア。

プレミアムエコノミーと同じく、押しボタンによる半自動両開きドアです。
押しボタンは左上にあり、かなり高い位置のため子供には厳しそうです。


クラブラウンジカー。

売店と、大きな革張りのソファー、テーブルが配置されています。
ラウンジカーの座席配置がボックスシートではなく、窓に背を向けたロングシートに近い配置となっています。
スピリットオブクイーンズランドの唯一のロングシートとも言えそうです。


売店。

暖かい食べ物や飲み物を購入することができます。
レールベッドの利用者には食事のサービスがありますが、プレミアムエコノミー利用者はここで食べ物を購入することになります。
鉄道グッズの販売はありません。


ラウンジのテーブルが小さいため、たくさんの商品を並べるのには厳しいような気がします。
登場当初のティルトトレイン時代からクラブラウンジカーのレイアウトは殆ど変化していません。


デッキ通路には、トイレと大型の荷物スペースがあります。


ブリスベンローマストリート駅の回送線を走行するスピリットオブクイーンズランド。(撮影時はティルトトレイン)

先住民族アボリジニのデザインを取り入れたラッピング車両です。


ローマストリート駅で旧塗装のSMU220と並ぶスピリットオブクイーンズランド。(撮影時はティルトトレイン)


ローマストリート駅を発車し、セントラル駅の地下線に進入するスピリットオブクイーンズランド。(撮影時はティルトトレイン)


ブリスベン近郊の複々線区間を走行するスピリットオブクイーンズランド。(撮影時はティルトトレイン)


朝のギンピーノース駅を発車したスピリットオブクイーンズランド。


ギンピーノース駅を発車し、ブリスベンを目指します。


振り子式車両ということもあり、屋根上がすっきりしています。


ギンピーノース駅を発車し、ブリスベンへ向けて加速するスピリットオブクイーンズランド。


ロックハンプトン駅北では、オーストラリア最大の併用軌道、デニソンストリートを 走行します。
最高速度160kmの振り子式車両が併用軌道を路面電車のようにゆっくりと走行する非常に珍しい光景です。


深夜のデニソンストリート駅を走行するケアンズ行きのスピリットオブクイーンズランド。

寝静まった静かな街にディーゼルエンジン音が響き渡ります。
デニソンストリートには明るい街灯が殆どなく、一時停車もないため深夜の撮影には苦労します。


暗闇のデニソンストリートを走行するケアンズ行きスピリットオブクイーンズランド。

デニソンストリート駅を過ぎた先の信号所で、上りと下りの列車が交換します。
そのため、上り下り両方の運転日の場合、午前0時半頃に2本のスピリットオブクイーンズランドを デニソンストリートで見ることができます。

上り下り共に0時半頃にデニソンストリートを通過するため、ロックハンプトンの時点で6時間以上の遅延が無い限り 明るいデニソンストリートを走行するスピリットオブクイーンズランドの姿を撮影するのは不可能です。


信号所でケアンズ行きと交換し、ブリスベン行きのスピリットオブクイーンズランドがデニソンストリートに 進入しました。

途中に信号待ち等で一時停止があれば明るさを稼げる写真が撮影できるのですが、デニソンストリートは 列車優先のため、自動車と衝突しそうになるようなことが無い限り併用軌道内で停車することはありません。
また、この時間帯は車は殆ど走っていません。


デニソンストリートを抜け、深夜のロックハンプトン駅構内に入線するブリスベン行きのスピリットオブクイーンズランド。

ブリスベン行きの列車は時刻表上では10分ロックハンプトンに停車しますが、併用軌道とロックハンプトン駅構内の境界地点から ロックハンプトン駅の駅舎までは1km近くあるため、撮影してから列車に乗り込むのは相当厳しいです。
長距離列車の時刻は必ずしも厳格に運用されてはおらず、乗降が済み次第早発する可能性もあります。
上りと下りの両方向の運転日であれば、ケアンズ行きを撮影した後にブリスベン行きに乗車することは可能ですが、 遅れ等により交換場所が変更となることも考えられますので、やはりリスクが伴います。


ケアンズ近郊を走るスピリットオブクイーンズランド。
終点まであと少しです。


踏切を低速で通過するスピリットオブクイーンズランド。

ケアンズ周辺では一般の踏切とは別に、サトウキビ列車の軽便鉄道との平面交差も複数存在します。


ケアンズ近郊のS字カーブを抜けるスピリットオブクイーンズランド。

この場所はケアンズ駅からも歩いていける場所で、ケアンズ始発となる回送を順光で撮影できるスポットですが、 列車通過直前にドン曇りになってしまいました。


25時間の長旅を終え、ケアンズ駅に到着したスピリットオブクイーンズランド。

列車の顔もやれやれといった感じがします。


ケアンズ駅構内にはカフェがありますが、営業時間は列車利用者をあまり想定していないようです。


ケアンズを出発し、ブリスベンまでの25時間の長旅が始まりました。


ケアンズの近郊を走るスピリットオブクイーンズランド。


ケアンズの街中を抜け、スピードを上げるスピリットオブクイーンズランド。


ケアンズ近郊を走るスピリットオブクイーンズランド

  後ろの鉄柱が列車のアンテナみたいな写真になりました。


スピリットオブクイーンズランドの走行動画集です。
ケアンズ、ロックハンプトン、ギンピーにて撮影しました。
大陸鉄道的な音色の警笛が特徴です。


ノースコースト線を25時間かけて走破するスピリットオブクイーンズランド。
州都ブリスベンと観光都市ケアンズを、飛行機では味わうことのできない車窓と共に快適に移動できます。


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